2024.01.22
歯が黒い?汚れ・虫歯・歯石など原因別の対処法
歯が黒くなっている場合の例と原因・リスク
歯が黒くなっている原因は、ほとんどの場合「むし歯」です。まずはむし歯を疑うべきですが、むし歯以外の原因でも歯が黒くなるケースもあります。以下では、歯が黒くなる主な原因をまとめています。
■むし歯になって歯が黒くなる
むし歯になると、歯の表面が黒くなります。これは、むし歯菌によって歯を形成しているミネラルが溶かされ、溶かされた箇所に食品などの色素が沈着することで歯が黒くなると考えられています。
歯の表面に見える黒い点が小さくても、むし歯が小さいとは限りません。歯の表面にあるエナメル質は非常に硬い組織ですが、その内側にある象牙質はやわらかい組織です。そのため、むし歯が進行するスピードも象牙質のほうが早く、エナメル質にはわずかな黒ずみしかなくても、内部の象牙質は大きくむし歯菌に溶かされているケースがあります。むし歯の進行度合いを正解に把握するには、歯科医院でレントゲン撮影を受ける必要があります。
基本的に、むし歯は自然治癒することはなく、放置するほど進行するリスクが高くなります。進行すると、神経を除去したり抜歯したりするリスクも高くなるので要注意です。
■着色汚れやヤニ汚れで歯が黒くなる
歯が黒くなる原因の一つとして、着色汚れが考えられます。私たちの歯は、色の濃い食べ物や飲み物によって徐々に着色していきます。食べ物では、カレーやチョコレート、ケチャップ、ぶどう、ブルーベリーなどは歯の着色汚れの原因になります。飲み物では、赤ワインやコーヒー、紅茶などが代表的です。これらを飲食することが多い人は、徐々に色素が濃くなって歯が黒く見えるようになることがあります。
飲食物以外で歯が黒くなる大きな原因がタバコです。ヘビースモーカーの人や喫煙期間が長い人ほど歯にヤニが付着して、黒ずんだ歯になりがちです。
■黒い歯石によって歯が黒く見える
歯が黒いのではなく、歯に付着している歯石が黒いために歯が黒く見えるケースもあります。そもそも歯石とは、プラーク(歯垢)が唾液に含まれる成分によって硬くなった塊のこと。通常の歯石はクリーム色をしていますが、歯ぐきの近くや歯周ポケット(歯と歯茎の間の溝)に付着する歯石は、血液の成分を含んでいるため黒っぽい色をしています。
特に歯周病にかかっている人は、歯茎からの出血があるため歯石も黒くなりがちです。また、歯周病が悪化すると歯茎が痩せて歯根部分が露出してきます。そのため、歯茎に隠れていた黒い歯石が目立つようになることがあります。
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■神経のない歯が黒くなる
むし歯が重症化して神経にまで達してしまうと、通常の場合、神経を除去する処置をおこないます。また、強い衝撃を受けて歯根が破折すると神経が死んでしまうことがあり、その場合も神経を除去する処置をおこないます。このようなトラブルで神経を除去した歯は、組織に栄養が行き渡らなくなって黒ずんでくることがあります。
■歯髄炎になって歯が黒くなる
歯髄炎(しずいえん)とは文字どおり、歯髄(歯の神経や血管)に炎症が起きる病気のことです。むし歯が進行して細菌が歯髄にまで達すると歯髄炎になるので、ある意味、むし歯の一種とも言えます。むし歯以外では、外傷によっても歯髄炎が起こることがあります。歯髄炎になると痛みが生じるほか、象牙質に黒ずみが生じて歯が黒く見えることもあります。
■外傷性破折になって歯が黒くなる
外傷性破折(がいしょうせいはせつ)とは、スポーツ中の転倒や交通事故など、外傷によって歯が折れたり歯に亀裂が入ったりする病気のことです。歯を強打して歯が破折すると歯の神経(歯髄)が死んでしまうことがあります。歯の神経が死んでしまうと、壊死した組織と血液が混ざり合うことで歯が黒っぽく見えることがあります。
■詰め物・被せ物で歯が黒くなる
歯の詰め物・被せ物の影響で歯や歯茎が黒く変色してしまうことがあります。たとえば、金属の詰め物や被せ物を長年使っていると、金属の成分がわずかに溶け出して変色の原因になることがあります。また、レジンと呼ばれる歯科用プラスチックの詰め物も使い続けているうちに変色していき、歯が黒っぽく見えることがあります。
それぞれの対処法や治療法
歯が黒くなっている場合は、その原因を見極めたうえで適切な治療・処置を受ける必要があります。放置しておいても健康上の問題がないケースもありますが、見た目が良くないので、一度歯科医院を受診することをおすすめします。以下では、歯が黒くなる原因別に主な治療法・対処法を記載しています。
■むし歯で歯が黒くなった場合の対処法
むし歯によって歯が黒くなっているのであれば、早急にむし歯治療を受けましょう。むし歯の進行段階はC1・C2・・・といった呼び方で区分されますが、C1・C2・C3のむし歯の場合は、基本的にむし歯部分を削り、削った部分に詰め物や被せ物をして噛む機能を回復させます。なお、むし歯治療で使う詰め物・被せ物は保険診療か自費診療かによって使える素材が異なります。自然な見た目を再現したい場合は、自費診療をおすすめします。自費診療では主に白く透明感のあるセラミックを使用するため、自然な見た目を再現できます。
■着色汚れやヤニ汚れで歯が黒くなった場合の対処法
着色汚れやヤニ汚れは病気ではないので、大きな心配はありません。とはいえ、見た目の印象を損なってしまうので、気になる場合は歯科医院でPMTCを受けるのがいいでしょう。PMTCとは、専門的な歯のクリーニングのこと。歯科衛生士が専用の機器を使い、口腔内の隅々までプラークや歯石、着色汚れを落としていきます。PMTCを受けることで、歯本来の白さを取り戻すことができます。
もし、それ以上の白い歯にしたい場合は、ホワイトニングやセラミック治療が選択肢になります。ホワイトニングとは、歯の内側から漂白する施術のことで、歯医者でおこなうオフィスホワイトニングと、ご自宅でおこなうホームホワイトニングがあります。セラミック治療とは、歯を少し削って、その上から白く透明感のあるセラミック素材を装着する治療です。
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■黒い歯石が付着している場合の対処法
黒い歯石が付着している場合、歯石を除去すれば見た目は改善しますが、それだけでは問題解決とならないケースが多々あります。黒い歯石の原因が歯周病である場合は、歯周病を治すことが先決です。
歯周病は、プラークに潜む細菌によって歯茎などの歯周組織が炎症を起こす病気です。歯周病を「歯茎から血が出るだけ」の病気だと思っている人もいますが、その認識は改めたほうがいいでしょう。歯周病を放置しておくと炎症が顎の骨にまで及んでいき、顎の骨が溶かされていきます。顎の骨が溶かされると歯を支えきれなくなり、最終的には歯が抜け落ちてしまいます。黒い歯石が付いている原因が歯周病であるなら、早めに治療を開始して歯周病の進行を食い止めることが大切です。
■神経のない歯が黒くなった場合の対処法
過去のむし歯治療などで神経を除去したために歯が黒く見えることがありますが、これは病気ではありません。とはいえ、神経を除去した歯はトラブルを起こしやすいので、一度歯科医院を受診してみるのがいいでしょう。
病気が隠れていなければそのままにしておいて構いませんが、どうしても黒い色が気になる場合や、前歯などの目立つ場所の場合は、セラミック治療が選択肢になってきます。セラミック治療は、歯を少し削って、その上から白い被せ物などをする治療です。使用するセラミックは周囲の歯のバランスに合わせて色や形を決められるため、本物の歯と区別がつかないくらいの自然な仕上がりになります。なお、神経を除去したために黒くなっている歯は、ホワイトニングでは白くできません。
■歯髄炎で歯が黒くなった場合の対処法
歯髄炎が起きている場合は、その歯髄を残せるか残せないかで治療法が変わってきます。歯髄を残せる(可逆性の歯髄炎)と診断された場合は、感染を取り除く処置をおこないます。一方で、歯髄を残せない(不可逆性の歯髄炎)と診断された場合は、根管治療をおこないます。根管治療とは、歯髄を取り除いて歯の根を洗浄・消毒する治療のこと。根管治療が終わったら、被せ物などをして歯の機能を回復します。
■外傷性破折で歯が黒くなった場合の対処法
外傷性破折が起きている場合は、残念ながらほとんどのケースで抜歯になり、インプラントやブリッジ、入れ歯などの人工歯で補うことになります。当然ですが、人工歯にすれば歯の黒ずみは解消できます。なお、破折の状態によっては特殊な接着材によって修復できる場合もあります。
■詰め物・被せ物で歯が黒くなった場合の対処法
詰め物・被せ物の影響で歯が黒く見える場合、根本的な対処法は、詰め物・被せ物を新しいものに変えることです。金属やプラスチックの素材はどうしても変色のリスクが伴うので、セラミックを選ぶのがいいでしょう。セラミックなら変色のリスクはほとんどなく耐久性にも優れているため、長く白い歯を維持することができます。
まとめ
歯が黒くなる代表的な原因と、改善するための治療法・対処法は以下のとおりです。
・むし歯になっている歯が黒くなる → 早急なむし歯治療を!
・着色汚れやヤニ汚れで歯が黒くなる → PMTCで汚れを除去!
・黒い歯石によって歯が黒く見える → 歯周病の疑いあり!まずは歯周病検査を!
・神経のない歯が黒くなる → 白くしたいならセラミック治療がおすすめ!
鏡を見て「歯が黒い」と感じたら、一度歯科医院を受診してください。根本の原因を除去できれば、本来の白い歯を取り戻すことができるはずです。
ガンコな着色汚れや歯石は、残念ながらご自宅でのブラッシングでは落とすことができません。お口の健康を維持するためにも、きれいな白い歯を保つためにも、ぜひ歯科医院での定期検診を習慣にしてくださいね。
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監修者情報
公開日:2019年11月27日
更新日:2024年1月22日
清水智幸(しみずともゆき)
東京国際クリニック/歯科 院長
歯学博士。日本歯科大学卒業後、近代歯周病学の生みの親であるスウェーデン王立イエテボリ大学ヤン・リンデ名誉教授と日本における歯周病学の第一人者 奥羽大歯学部歯周病科 岡本浩教授に師事し、ヨーロッパで確立された世界基準の歯周病治療の実践と予防歯科の普及に努める。歯周病治療・歯周外科の症例数は10,000症例以上。歯周病治療以外にも、インプラントに生じるトラブル(インプラント周囲炎治療)に取り組み、世界シェアNo.1のインプラントメーカー ストローマン社が開催するセミナーの講師を務めるなど、歯科医師の育成にも力を入れている。
・日本歯周病学会 認定医
・日本臨床歯周病学会 認定医
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