2024.01.22
口臭の原因と考えられる病気とは?病気以外の原因についても解説
口臭とは?
口臭とは文字どおり、お口のニオイのこと。人は誰でも多かれ少なかれお口のニオイがあるもので、これは「生理的口臭」と呼ばれます。一方で、「病的口臭」と言って、口腔内や全身の器官に病気があるために引き起こされる口臭もあります。生理的口臭があることを悩む必要はありませんが、病的口臭がある場合は原因となっている病気を治療することが先決です。そうしなければ、口臭が軽減されることもありません。
口臭の原因となる口腔内の病気・トラブル
病気が原因で発生する口臭を「病的口臭」と言います。病的口臭は大きく分けると、「口腔内に原因がある場合」と「呼吸器系や消化器系の病気が原因になっている場合」があります。病的口臭の90%以上は前者、つまり口腔内に原因がある場合です。口臭の原因となる口腔内の病気としては、以下のような病気が挙げられます。
■歯周病による口臭
口臭の原因として非常に多いのが歯周病です。歯周病が進行すると歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)が深くなっていき、この歯周ポケット内で細菌が増殖します。そうなると歯茎に炎症を起こし、歯茎から血や膿が出るようになり、それらが口臭の原因となるのです。歯周病による口臭は「メチルメルカプタン」が原因物質であり、野菜や魚が腐ったようなニオイがするのが特徴。歯周病が進行するほどメチルメルカプタンの濃度が高くなり、口臭がきつくなっていきます。
■むし歯による口臭
むし歯も口臭の原因になります。むし歯になると歯に穴が空きますが、この穴の中に食べカスやむし歯の原因菌が溜まることで口臭が発生します。また、むし歯が進行して神経が侵されてしまうと、歯の根の先に膿みが溜まる病気(根尖病巣)を発症することがありますが、根尖病巣になるとさらに強烈なニオイを発するようになります。
■口腔がんによる口臭
舌癌などの口腔がんによって、独特の口臭が発生することがあります。
なお、病気ではありませんが、口腔内に以下のような症状・トラブルがあると口臭が発生する原因になります。
■舌苔による口臭
舌苔(ぜったい)とは、舌の表面に溜まった汚れのことです。舌の角質の隙間に細菌や汚れなどが溜まっていくと、舌の上に苔が生えたように白くなっていきます。体調が優れないときなどは特に舌苔が溜まりがちですが、舌苔が溜まると口臭も強くなっていく傾向にあります。
鏡で舌をチェックして白くなっているようであれば、舌苔を取り除きましょう。ブラッシングの後、専用の舌ブラシを舌の奥から手前に動かして掃除します。歯ブラシでも舌苔を取り除くことはできますが、力を入れすぎると舌が傷付いてしまうので軽い力で動かすようにしましょう。
■唾液の減少による口臭
唾液は口腔内を洗浄する働きがあり、唾液が分泌されることで細菌の働きが抑制され、口腔内を清潔に保つことができます。逆に、唾液の分泌が減ると口腔内を十分に洗い流すことができなくなり、口臭が強くなる傾向にあります。緊張やプレッシャー、ストレスを感じると唾液の量が減って口臭が強くなる傾向にあります。また、お酒やタバコなどの嗜好品を好む人も、唾液の分泌が減って口臭が発生しがちです。
■合っていない補綴物による口臭
過去のむし歯治療などで補綴物(詰め物・被せ物)を入れている人は少なくありませんが、長年使っていると補綴物が劣化・摩耗していき、歯との間に隙間ができることがあります。そうなると、できた隙間に汚れが溜まり、口臭を引き起こすことがあります。
■入れ歯の清掃不良による口臭
プラスチック製の入れ歯は、ニオイを吸着する性質があります。そのため、しっかりお手入れしていないと口臭の原因になることがあります。
口臭の原因となる全身の病気
鼻やのどの病気、呼吸器系の病気、消化器系の病気、糖尿病、肝臓疾患などによって、口臭が発生するケースもあります。口臭が強くなる代表的な病気としては、以下のような病気が挙げられます。
・呼吸器系の病気(肺結核、気管支炎、気管支拡張症、肺ガン など)
・消化器系の病気(胃炎、胃潰瘍、胃下垂、胃ガン、十二指腸潰瘍、食道気管支瘻、逆流性食道炎 など)
・耳鼻咽喉系の病気(慢性鼻炎、蓄膿症、アデノイド、扁桃炎、咽頭膿瘍、咽頭ガン、副鼻腔炎・副鼻腔ガン など)
・肝臓の病気(肝硬変、肝炎、肝臓ガン など)
・腎機能障害(腎不全 など)
・糖尿病
生理的口臭
生理的口臭とは、多かれ少なかれ誰にでもある自然な口臭のことです。私たちは朝起きた直後や空腹のとき、また緊張したときなどは口臭が強くなる傾向にあります。なぜなら、このようなときは唾液の分泌が減少し、細菌が増殖して口臭の原因物質である揮発性硫黄化合物(VSC)が増えるからです。また、女性の月経時や妊娠時など、ホルモンバランスが変化することによって生理的口臭が生じることもあります。
病的口臭の多くは強いニオイを発するため、周囲の人に不快にすることがありますが、生理的口臭は周囲を不快にするほどの強いニオイではありません。一般的に、会話をする距離では感じられない程度のニオイです。また、生活習慣や体調によって生理的口臭の程度は変わってきますし、一日のうちでも変動がありますが、基本的に無臭になることはありません。
生理的口臭はいわば「自分自身の自然なニオイ」なので、本人が気付いていないケースも多々あります。一方で、自分の生理的口臭を気にするあまり、「周囲に臭いと思われていないだろうか・・・」と不安を感じる人もいます。気にし過ぎると、後述する「心理的口臭」になってしまうことがあるので注意が必要です。
生理的口臭は誰にでもあるものなので、神経質になる必要はありません。毎日きちんとブラッシングをするとともに、口腔内が乾燥しているときは水分補給をするなど、当たり前のデンタルケアをしていれば他人を不快にさせるようなことはないでしょう。
飲食物・嗜好品による口臭
ニオイの強いものを口にすると口臭が生じることがあります。口臭の原因となる飲食物・嗜好品として代表的なものは、ニンニク、ネギ、ニラ、キムチ、お酒、コーヒー、タバコなどが挙げられます。飲食物による口臭は一時的なもので、時間の経過とともにニオイは軽減していきます。ただし、お酒やコーヒーを飲む人やタバコを吸う人は唾液の分泌量が減少するため、慢性的に口臭が発生しがちです。
心理的口臭
周囲を不快にさせるような口臭はないのに、「自分は口が臭い」と思い込んでしまう人がいます。このような思い込みを「心理的口臭」と言い、ひどい人は「人間関係がうまくいかないのは自分の口臭のせいだ・・・」などと考えてしまうこともあります。心理的口臭が起きる原因は主に、過去のトラウマや精神的なストレス・不安だと言われています。
心理的口臭を改善するには、一度、歯科医院で口臭測定を受けてみるのがいいでしょう。口臭測定を受ければ客観的な数値として自分の口臭を把握できます。その結果、「自分の口臭は平均的だ」とうことを認識できれば、心理的口臭の改善につながるはずです。なお、口臭測定器はどの歯科医院にもあるわけではありません。
まとめ
口臭の原因のほとんどはお口のなかにあります。口臭が気になる方、家族などから口臭を指摘されて悩んでいる方は、まずは歯科医院を受診しましょう。歯科医院を受診して歯周病やむし歯が見つかれば、すみやかに治療を受けます。原因となっている病気が治れば、口臭も収まるはずです。もし、それでも口臭が軽減されない場合は口腔内以外に病気が隠れている可能性があるため、内科などの専門科を受診するのがいいでしょう。
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監修者情報
公開日:2021年5月12日
更新日:2024年1月22日
清水智幸(しみずともゆき)
東京国際クリニック/歯科 院長
歯学博士。日本歯科大学卒業後、近代歯周病学の生みの親であるスウェーデン王立イエテボリ大学ヤン・リンデ名誉教授と日本における歯周病学の第一人者 奥羽大歯学部歯周病科 岡本浩教授に師事し、ヨーロッパで確立された世界基準の歯周病治療の実践と予防歯科の普及に努める。歯周病治療・歯周外科の症例数は10,000症例以上。歯周病治療以外にも、インプラントに生じるトラブル(インプラント周囲炎治療)に取り組み、世界シェアNo.1のインプラントメーカー ストローマン社が開催するセミナーの講師を務めるなど、歯科医師の育成にも力を入れている。
・日本歯周病学会 認定医
・日本臨床歯周病学会 認定医
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