2024.01.22
歯周炎とは?原因や症状・治療法について
歯周炎とは
歯周炎は、歯茎や顎の骨などの歯周組織に炎症が起こる病気で、歯肉炎が進行することで発症します。
歯周炎を理解するためには、歯肉炎や歯周病との違いを正しく知っておかなければいけません。一般的に「歯周病」と言ったら、「歯肉炎」と「歯周炎」の両方を含みます。歯周病は、歯肉炎と歯周炎という2つのステージに分けることができ、最初に歯肉炎が発症し、歯肉炎が進行することで歯周炎が発症します。
歯肉炎と歯周炎で何が違うのかと言えば、炎症が及んでいる範囲です。炎症が歯茎でとどまっていれば歯肉炎(つまり、歯肉の炎症)ですが、炎症が顎の骨にまで及んでいれば歯周炎(つまり、歯の周囲の炎症)となります。なお、歯周炎はさらに「軽度歯周炎」「中度歯周炎」「重度歯周炎」の3段階に分けられるのが一般的です。
歯周炎の代表的な症状としては、歯茎の腫れや出血、排膿、口臭などが挙げられますが、重症化すると顎の骨が徐々に溶かされていき、歯がグラグラしてきます。治療を受けずに放置していると最終的には歯が抜け落ちてしまうため、甘く見ることはできません。実際に、歯周炎は日本人が歯を失う原因の第1位になっており、特に高齢になると歯周炎で歯を失う人が大幅に増加します。
歯肉炎の原因は歯周病菌(プラーク)ですが、歯肉炎の段階であれば、毎日の丁寧なブラッシングによって治癒させることができます。しかし、歯周炎に発展してしまうとブラッシングだけで治ることはなく、歯科医院での治療が必要になります。
歯周炎の原因
歯周炎の直接的な原因も、歯肉炎と同じく歯周病菌(プラーク)です。口腔内にプラークが溜まると、プラークに潜む歯周病菌が悪さをして歯茎に炎症を起こします。これが、歯周炎の始まりです。
歯周炎は口腔内の清掃が不十分で、口腔内に歯周病菌が多い人ほど発症しやすくなりますが、どの程度の歯周病菌があると歯周炎を発症するのかは個人差があります。たとえば、免疫力の低い人は口腔内に「10」の歯周病菌しかいなくても歯周炎を発症することがありますが、免疫力の高い人は口腔内に「100」の歯周病菌がいても歯周炎を発症しないことがあります。高齢になるほど歯周炎にかかりやすくなりますが、これは加齢による免疫力の低下が関係していると言われます。
■歯周炎の間接的な原因
歯周炎の間接的な原因とされているのが、喫煙やストレス、遺伝や糖尿病などです。喫煙者は白血球の機能が低下するため細菌に対する抵抗力も下がり、歯周炎を招くリスクが高くなります。ストレスも同様で、大きなストレスを抱えている人ほど免疫力が下がるため、歯周炎を発症しやすくなります。
また、歯周炎そのものは遺伝しませんが、「歯周炎になりやすい体質」は遺伝するという考え方が現在の主流です。糖尿病患者は全身の免疫力が低下するため、歯周炎にかかるリスクも高くなります。
歯周炎の症状
歯周炎は、その進行度合いによって「軽度歯周炎」「中度歯周炎」「重度歯周炎」の3段階に分けられるのが一般的です。段階によって歯周炎の症状も変わってきます。
軽度歯周炎の症状としては、歯茎の腫れや出血が代表的です。歯を指で押すと前後に動くこともあります。中度歯周炎に進行すると歯茎の腫れや出血がひどくなるほか、歯茎からの排膿や口臭が見られるようになります。また、歯が前後・左右にグラつくようになるのも中度歯周炎の症状の一つです。
重度歯周炎にまで進行すると、歯茎が腫れあがり出血・排膿がひどくなり、口臭はさらに強いものになります。顎の骨が大きく溶かされているため、歯がグラグラして食べ物を噛むのにも苦労するようになります。その他、「歯の隙間が広がる」「歯が長くなったように見える」など見た目の変化が目立つようになるのも重度歯周炎の特徴です。
>> 軽度歯周炎の詳細はこちら
>> 中度歯周炎の詳細はこちら
>> 重度歯周炎の詳細はこちら
歯周炎の診断方法
歯周炎の診断の際には、以下のような方法が用いられるのが一般的です。
■歯周ポケット検査
歯周炎が進行するほど、歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)は深くなります。歯周ポケット検査では、歯周ポケットに「プローブ」という器具を挿入して、その深さを測定することで歯周炎の進行度合いを診断します。
■歯の動揺度検査
歯周炎が進行すると、歯を支えている顎の骨が徐々に溶かされていくため、歯がグラグラするようになります。歯の動揺度検査では、歯がどの程度グラつくかを測定することで歯周炎の進行度合いを診断します。
【関連記事】:歯がグラグラしてきたら絶対に歯周病?
■レントゲン検査
上述のとおり、歯周炎が進行すると、歯を支えている顎の骨が徐々に溶かされていきます。レントゲン検査では、レントゲン写真から顎の骨がどのくらい溶かされているか(どのくらい残っているか)をチェックすることで歯周炎の進行度合いを診断します。
歯周炎の治療方法
歯周炎の治療は、その原因である歯周病菌(プラーク)や歯石を除去すること基本になります。歯茎より上に付着したプラークであれば、自分自身のブラッシングで除去できますが、歯周ポケットの内部に溜まったプラークや歯石はブラッシングで除去することはできません。そのため、歯科医院において以下のような専門的な治療が必要になります。
■デブライドメント
デブライドメントとは、プラークを取り除く治療のことです。手動の器具や超音波などを用いて、歯周ポケットの内部に溜まったプラークを除去します。
■スケーリング
スケーリングとは、「スケーラー」という専用機器を使って歯石を取り除く治療のことです。歯石は「死んだ細菌の塊」なのでそれ自体が歯周炎を引き起こすことはありませんが、歯石があると、その上にプラークが付着しやすくなるので、結果的に歯周炎を招く要員になります。そのため、スケーリングでしっかりと歯石除去をする必要があります。
■歯周外科治療
中度歯周炎や重度歯周炎になると歯周ポケットが深くなっていきますが、深くなった歯周ポケットの内部に溜まったプラークや歯石は、デブライドメントやスケーリングで除去するのが困難です。その場合は、歯茎を切開してプラークや歯石を除去する「歯周外科治療」をおこなうのが一般的です。歯周外科治療では、歯周炎が進行した部位の歯茎を切開し、歯根面に付着しているプラークや歯石を取り除きます。
また、効果的に歯周炎を治療するためには、糖尿病や喫煙などの危険因子を無くすことも大切です。糖尿病を患っている人は糖尿病を改善することで歯周炎が治りやすくなりますし、タバコを吸う人は禁煙をすることで治療結果が良いものになります。
【関連記事】:歯肉炎の治療方法と予防方法とは?
まとめ
歯周炎は治る病気ですが、「歯科医院任せ」の姿勢では治すのが難しくなりますし、治ったとしても再発リスクが高くなります。歯周炎の原因であるプラーク(歯周病菌)を少なくするためには、日々のブラッシングが何より重要です。毎日正しいブラッシングを実践しており、なおかつ3~4ヶ月に1回のペースで歯科検診を受診している人なら、歯周炎で歯を失うことはないはずです。
※ 参考:歯周炎 – 18. 口と歯の病気 – MSDマニュアル家庭版
※ 参考:歯周炎 / 歯槽膿漏 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
監修者情報
公開日:2021年8月10日
更新日:2024年1月22日
清水智幸(しみずともゆき)
東京国際クリニック/歯科 院長
歯学博士。日本歯科大学卒業後、近代歯周病学の生みの親であるスウェーデン王立イエテボリ大学ヤン・リンデ名誉教授と日本における歯周病学の第一人者 奥羽大歯学部歯周病科 岡本浩教授に師事し、ヨーロッパで確立された世界基準の歯周病治療の実践と予防歯科の普及に努める。歯周病治療・歯周外科の症例数は10,000症例以上。歯周病治療以外にも、インプラントに生じるトラブル(インプラント周囲炎治療)に取り組み、世界シェアNo.1のインプラントメーカー ストローマン社が開催するセミナーの講師を務めるなど、歯科医師の育成にも力を入れている。
・日本歯周病学会 認定医
・日本臨床歯周病学会 認定医
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