2024.01.22
「5人に4人が歯周病」は本当?数字で見る歯周病の実態
プラーク(歯垢)内の細菌によって歯周組織が破壊されてしまう歯周病は、「世界でもっとも患者数が多い病気」としてギネス世界記録にも記載されるほど身近な病気です。とりわけ、先進国の中でも歯周病患者が多いとされるのがここ日本。厚生労働省が平成23年に行った患者調査の概況によれば、継続的に歯肉炎および歯周疾患の治療を受けている(と推測される)患者は265万人以上にのぼると報告されています。
今回のコラムでは、数字の側面から歯周病の実態にフォーカスしてみたいと思います。歯の喪失を避けるためには正しい歯周病治療を受ける必要がありますが、まず歯周病の実態について正しく理解しましょう。
「成人の8割が歯周病」はあながち間違いではない
歯科医院などの医療機関のWebサイトやテレビCMなどで、「成人の8割が歯周病にかかっている」といった記載を見たことがある方も多いかと思います。では「何をもって歯周病にかかっていると言えるのか?」ですが、厚生労働省が運営する健康情報サイト「e-ヘルスネット」では、調査にあたって歯周病の進行段階を以下の5段階に分けています。
0:歯肉に炎症が見られない(健全な状態)
1:歯周ポケットの深さを測った際に出血がある
2:歯肉縁下4mm以内に歯石がある
3:歯周ポケットの深さが4~6mmに達している
4:歯周ポケットの深さが6mm以上ある
この5段階のうち、「0:歯肉に炎症が見られない(健全な状態)」以外のケースはすべて歯周疾患の有病状態と評価されます。この考え方をふまえると、「成人の8割が歯周病」というのもあながち間違いではないと言えるでしょう。
「重症」に該当する歯周病患者数は7%程度
上記の1~4に該当する成人は、実に約5,000万人とも言われています。ほんの少し出血や歯石が見られるだけでも「有病状態」と評価されてしまうため、「成人の8割が歯周病」というのは少々大袈裟な表現と言えるかもしれません。冒頭で「歯周疾患の治療を継続的に受けている患者数は265万人以上」とお話ししましたが、3と4に該当する重症な歯周病にかかっている患者さんは、1~4に該当する方々の7%程度です。
年齢別の歯周疾患の実態に目を向けてみると、免疫力が低下する高齢者ほど発症のリスクが高くなります。e-ヘルスネットのデータによると、15~24歳では3と4に該当する歯周病患者が10%に満たない一方で、65~74歳の前期高齢者で約53%、75歳以上の後期高齢者で約62%に達しています。
日本人は80歳で17本の歯を失う?
これほど歯周病の有病状態の方が多い背景には、歯周病予防に対する意識の低さ、国としての取り組みも影響していると言われています。日本では「痛くならないと歯医者に行かない」「痛くなくなったら歯医者に行くのをやめる」といった考え方が慣習化されていることもあり、歯周病治療ではなく歯周病にならないために通院するという習慣が根付いてきませんでした。この予防意識の低さが、残存歯の数にも影響していると考えられています。
平成23年の歯科疾患実態調査では、日本人の80歳時点での残存歯数は平均10.6本と報告されています。永久歯は通常28本生えるので、80歳を迎えた人の約半数が単純計算で17本以上歯を失っているということです。これに対し、歯科先進国と言われるスウェーデンでは平均約25本。スウェーデンでは予防目的の歯科診療も保険適用の範囲となっており、国を挙げて予防に努めていることが平均残存歯の多さにつながっていると言えます。
歯周病予防のために歯医者を活用しましょう
日本人が歯を失う理由で最も多いのが歯周病です。「症状がないから大丈夫」「重症化していないから大丈夫」というわけではなく、「気付いたら重症化していた」というケースも少なくないので注意が必要です。
治療のために歯医者へ行くだけではなく、予防のために歯科医院を活用することで、歯周病で歯を失うリスクを大きく減らすことができます。
ご自身の歯周病リスクや歯周病にならないための予防法など、私ども東京国際クリニック/歯科へお気軽にご相談ください。
監修者情報
公開日:2016年4月22日
更新日:2024年1月22日
清水智幸(しみずともゆき)
東京国際クリニック/歯科 院長
歯学博士。日本歯科大学卒業後、近代歯周病学の生みの親であるスウェーデン王立イエテボリ大学ヤン・リンデ名誉教授と日本における歯周病学の第一人者 奥羽大歯学部歯周病科 岡本浩教授に師事し、ヨーロッパで確立された世界基準の歯周病治療の実践と予防歯科の普及に努める。歯周病治療・歯周外科の症例数は10,000症例以上。歯周病治療以外にも、インプラントに生じるトラブル(インプラント周囲炎治療)に取り組み、世界シェアNo.1のインプラントメーカー ストローマン社が開催するセミナーの講師を務めるなど、歯科医師の育成にも力を入れている。
・日本歯周病学会 認定医
・日本臨床歯周病学会 認定医
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