2024.01.23
インプラント治療に関するよくある誤解
誤解01:天然歯よりもインプラントのほうが優れている?
インプラント治療が確立されたのは1969年のこと。以来、約50年の間、非常に優れた治療法として広く普及してきました。現在では、世界各国にインプラントメーカーが設立され、各社競ってクオリティーの向上に努めています。しかし、現時点では残念ながら、天然歯を上回るインプラントは開発されていません。
インプラントには「歯根膜」がない!?
天然歯とインプラントの決定的な違いは、「歯根膜」の有無です。天然歯と骨の間には歯根膜という天然の組織があります。歯根膜は外から侵入してきた歯周病菌など細菌を排除しようとする「免疫機能」を果たし、バリアとなって細菌をブロックしてくれます。
一方で、インプラントと骨の間には歯根膜は存在せず、直接骨と結合しているため、細菌に対するバリア機能が働きません。つまり、細菌に対する抵抗力は、インプラントは天然歯に劣るということです。インプラントは非常に優れた治療法ですが、この点が、天然歯を上回れない重要なポイントです。
本当に抜歯する必要がありますか?
歯周病が進行すると、歯を支える骨(歯槽骨)や歯茎などの歯周組織が細菌によって侵され、歯槽骨が溶け出します。重症化すると歯を支えきれなくなり、やがてグラグラと揺れ出します。長い間、歯科医院に通っても歯周病が改善せず、食事をするのも不自由になってくると、「もう歯を抜いてしまって、インプラントを入れたほうが楽なのではないか・・・」と考える人もいるでしょう。
たしかに、歯周病の進行度合いによっては歯を残すことが困難なケースもあります。しかし、自己判断をしてはいけません。なぜなら、上述のとおり、インプラントより天然歯のほうが優れているからです。インプラントは見た目や噛む力なども天然歯に近く、歯を失ってしまった際の治療法として優れた治療法ですが、それでも天然歯に勝るものではないからです。
たとえば、歯医者さんで「抜歯してインプラントにしましょう」と言われたとします。そのとき、担当の先生の説明に納得されているのであれば、「抜歯」という選択で良いと思います。しかし、抜歯することに少しでも疑問や不安があるのなら、一度立ち止まって「歯を残せる可能性」を一緒に考えてくれる歯科医院を探してみてもいいかもしれません。結果的に抜歯せざるを得なくなったとしても、しっかりとした判断をしてくれる歯科医院を選ぶことが大切です。
誤解02:歯周病が重症化したら、抜歯してインプラント治療を受けるべき?
上述のように、歯周病治療を受けていると、医師から「抜歯してインプラント治療をしましょう」と言われることがあるかもしれません。もちろん、重度歯周病で歯を残す手立てがないケースもありますが、歯を残せる可能性があるにもかかわらずインプラント治療を勧められることもあるようです。歯科医院によって専門性や治療方針が異なることは多々ありますが、こういったアドバイス・提案をする歯科医院・ドクターは、歯周病に関する専門性が低いと言わざるを得ません。
歯周病治療もインプラント治療も専門性が求められる治療です。十分な知識と専門性を有する歯科医院であれば、「歯を残せるのにインプラント」、「歯周病が治ってないのにインプラント」という提案をすることはないと思います。
インプラント治療の前には徹底的な歯周病治療が必要!
歯周病を治さないままインプラントを入れると、インプラント周囲炎になる確率が4倍高まることが分かっています。また、口腔内のインプラントの数が4本を超えると、インプラント周囲炎を発症するリスクが15倍になるなど、インプラントの本数が増えるほどインプラント周囲炎のリスクが高くなることが分かっています。
だからこそ、インプラント治療をするとしても、その前に歯周病を確実に治さなければいけませんし、残せるはずの歯を抜いてインプラントの数を増やしてはいけないのです。
誤解03:インプラントを入れたら一生使える?
歯周病がかなり重度に進行してしまったら、抜歯を余儀なくされます。自分の歯を抜くことになったら、何らかの方法で失った歯の機能を補う必要がありますが、その際にベストな選択肢はやはり「インプラント」です。インプラント治療は「費用が高額」、「外科手術が必要」などをデメリットに取られることもありますが、見た目や噛む力などご自身の歯と同じように生活していただけるので、入れ歯やブリッジにはない大きなメリットがあります。
このようにインプラントは非常に優れた治療ですが、上述してきたとおり万能ではありません。インプラント周囲炎に罹患しないためのインプラント治療と日々のメンテナンスがとても大切になります。
インプラントを長持ちさせるには毎日のブラッシングが必須!
毎日のブラッシングが不十分だったり、定期的に歯科医院でメンテナンスを受けていなかったりすると口腔内のプラークが増殖し、インプラント周囲炎になるリスクが高まります。インプラント周囲炎を放置しておくと、せっかく入れたインプラントも維持できなくなってしまいます。
逆を言えば、正しいブラッシングと定期的なメンテナンスでプラークコントロールができていればインプラント周囲炎にはならず、長期にわたってインプラントをご使用いただけます。特にブラッシングは、ご自身でできる唯一の予防法であり治療法です。長期にわたってインプラントをご使用していただくためにも、正しいブラッシングの習得が必要不可欠なのです。
徹底的に歯周病を治して自分の歯を残しましょう!
東京国際クリニック/歯科の歯周病治療「PERIOD.(ペリオド)」では、抜歯は最終的な処置と考え、歯を残せる可能性がある限りその可能性を追求します。
他院で「抜歯するしかない」「この歯は残せない」と言われた重度の歯周病の方も、まずは一度お気軽にご相談ください。
監修者情報
公開日:2017年12月23日
更新日:2024年1月23日
清水智幸(しみずともゆき)
東京国際クリニック/歯科 院長
歯学博士。日本歯科大学卒業後、近代歯周病学の生みの親であるスウェーデン王立イエテボリ大学ヤン・リンデ名誉教授と日本における歯周病学の第一人者 奥羽大歯学部歯周病科 岡本浩教授に師事し、ヨーロッパで確立された世界基準の歯周病治療の実践と予防歯科の普及に努める。歯周病治療・歯周外科の症例数は10,000症例以上。歯周病治療以外にも、インプラントに生じるトラブル(インプラント周囲炎治療)に取り組み、世界シェアNo.1のインプラントメーカー ストローマン社が開催するセミナーの講師を務めるなど、歯科医師の育成にも力を入れている。
・日本歯周病学会 認定医
・日本臨床歯周病学会 認定医
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