2024.02.14
親知らずは抜歯すべき?奥歯を虫歯や歯周病にしないためには
親知らずは痛いだけじゃない
人によっては違和感や痛みを伴う親知らず。前歯から数えて8番目の奥歯である親知らずは、第3大臼歯という永久歯で、一般的には10代後半から20代前半までに生えてきますが、30~40代になってから生えてくるケースも確認されています。親知らずの生え方は人によって異なり、まっすぐ生える人や斜めに生える人、歯茎に埋まったままの状態の人もいます。また、親知らずが生まれつき存在せず生えてこない人もいるようです。
このように個人差のある親知らずですが、放置しておくと虫歯や歯周病など口腔内のトラブルに発展する可能性があります。今回は、親知らずがもたらすさまざまな影響についてご説明します。
親知らずがもたらす身体への影響
現代人は硬い食べ物を噛む機会が減ったため顎が十分に発達せず、8番目の奥歯がしっかりと生えるスペースが十分でない人が多くなったといわれています。斜めに生えた親知らずによって圧迫された歯茎が炎症を起こしたり、隣の歯を圧迫することで歯並びを悪くしたりと、口腔内に悪影響を及ぼすケースも多々あります。親知らずによる悪影響は口腔内だけにとどまらず、歯並びの乱れによって噛み合わせが悪くなるため、頭痛や肩こりの原因にもなってしまうのです。
親知らずは虫歯や歯周病の原因に
親知らずの生え方によっては、隣の歯が虫歯や歯周病になる原因にもなります。斜めに生えた親知らずが手前の奥歯に隣接することで、歯ブラシがきちんと奥まで届かず「磨きづらい歯」ができるため、除去することができない歯垢が生まれます。磨き残した食べカスは歯垢(プラーク)へと変化。歯垢に潜む細菌の働きにより虫歯や歯周病になります。歯周病は歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)に歯石や歯垢が溜まることで、内部に潜む歯周病菌の出す毒素により歯茎や歯を支える顎の骨(歯槽骨)などの歯周組織が破壊される病気です。
歯周病の原因は歯垢です。原因が除去できなければ歯周病や虫歯になるリスクが高まります。歯周病が進行すると、歯茎から出る血や膿で口臭がきつくなる原因にもなります。
奥歯の虫歯・歯周病治療には親知らずの抜歯が必要になることも
虫歯や歯周病の治療を進める際に、親知らずの生え方によっては抜歯を検討することがあります。親知らず自体は決して悪いものではありません。ですが、親知らずが歯茎から顔を出し、その手前の奥歯(前歯から数えて7番目の歯)と隣接することで「さらに磨きづらい歯ができる(磨き残しが増える)」ことになり、結果的に虫歯や歯周病にかかるリスクが高まってしまうのです。
虫歯や歯周病の治療との兼ね合いから親知らずを抜歯するケースもありますが、必ずしも抜かなくてはならないわけではありません。親知らずがまっすぐに生えていて、きちんと歯磨きができている状態であるならば、あえて抜かないこともあります。8本目の奥歯として、日常生活に支障がなければ問題ないでしょう。親知らずが完全に顎の骨の中に埋まっている場合も、虫歯や歯周病の危険性がないため必ずしも抜く必要はありません。
現在、すでに口腔内に親知らずのある人は痛みや出血などの自覚症状がなくても、定期的に歯科医院で検査を受けるようにするとよいでしょう。歯周病は「沈黙の病気(サイレント・ディジーズ)」と呼ばれるなど、自覚症状が少ないことが特徴です。歯周病は日本人が歯を失うもっとも多い原因です。親知らずの周辺は歯ブラシが届きにくい位置にあるので歯垢が溜まりやすく、歯周病になりやすいためとくに丁寧に磨くようにしておきましょう。
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監修者情報
公開日:2019年10月19日
更新日:2024年2月14日
清水智幸(しみずともゆき)
東京国際クリニック/歯科 院長
歯学博士。日本歯科大学卒業後、近代歯周病学の生みの親であるスウェーデン王立イエテボリ大学ヤン・リンデ名誉教授と日本における歯周病学の第一人者 奥羽大歯学部歯周病科 岡本浩教授に師事し、ヨーロッパで確立された世界基準の歯周病治療の実践と予防歯科の普及に努める。歯周病治療・歯周外科の症例数は10,000症例以上。歯周病治療以外にも、インプラントに生じるトラブル(インプラント周囲炎治療)に取り組み、世界シェアNo.1のインプラントメーカー ストローマン社が開催するセミナーの講師を務めるなど、歯科医師の育成にも力を入れている。
・日本歯周病学会 認定医
・日本臨床歯周病学会 認定医
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