2024.01.22
歯茎が黒い原因は歯周病?適切な対処法
歯磨き・ブラッシングする際に鏡を見ると、歯茎がところどころ黒ずんでいる……。
痛みや出血がないからと放っておくと、やがては健康な歯を維持できなくなるなど、大変な事態に発展する恐れがあります。また、歯茎が黒いと不健康な印象を持たれやすくなるでしょう。今回は、歯茎が黒くなる原因を、「喫煙」「口腔内の金属」「歯周病」の3つの可能性からご説明します。
歯茎が黒くなる3つの原因
■歯茎が黒くなる原因① タバコによるメラニン沈着
喫煙者の方は、タバコが原因で歯茎が黒ずんでいる可能性があります。タバコに含まれるニコチンやタールなどから歯茎を守るために「メラニン色素」が作られ、それが沈着することで歯茎が黒く変色します。これは紫外線などによる日焼けを防ぐため、皮膚の表面にメラニン色素が作られるのと同じ原理です。また、タバコのヤニが歯に付着することで、茶色く変色してしまいます。ヤニのついた歯にはプラーク(歯垢)や歯石が付着しやすくなるため、口腔内環境にも悪影響を及ぼしやすくなります。
また、定期的におこなうホワイトニングやクリーニングによって歯のケアをしている人も、歯茎のケアまでは怠りがちです。ホワイトニングによって歯が白くなっても歯茎が黒ずんでいると、審美的にも相手にマイナスのイメージを与えてしまいます。
■歯茎が黒くなる原因② 金属製の素材が錆びて溶け出す「メタルタトゥー」
タバコを吸わないのに歯茎が黒ずんでいる方は、過去の歯科治療が影響しているかもしれません。クラウン(被せ物)やインレー(詰め物)、被せ物の土台(コア)などに金属の素材が使われていると、経年によって金属が錆びて溶け出し、歯茎に沈着して変色することがあります。
これをメタルタトゥー(金属の刺青)と言い、歯茎が帯状または反転状に黒く変色してしまいます。保険適用のむし歯治療の場合は金属製の補綴物を使うケースが多く、メタルタトゥーによって歯茎が黒くなる原因になっています。
■歯茎が黒くなる原因③ 重度の歯周病で歯茎から排膿している
重度の歯周病により歯根が露出し、膿が出ている状態
歯茎が黒くなる原因として、もっとも深刻な症状が歯周病です。歯周病が重症化すると、歯茎から出血するだけでなく膿が出るようになります。この「排膿(はいのう)」と呼ばれる症状が原因となり、歯茎が黒ずんで見えることがあります。
歯周病は歯磨きで落としきれなかったプラークの内部で細菌が繁殖し、歯茎に炎症を起こすとともに、歯の骨を溶かしていく恐ろしい病気です。歯を支える「歯槽骨」とその間にある「歯根膜」が破壊され、徐々に歯がグラついてきて、放置していると最終的には歯が抜け落ちてしまいます。
歯茎が黒くなったときの対処法
■薬液で黒ずみを除去できる
タバコのヤニが原因で歯茎が黒くなっている場合は、専用の薬液を歯茎に塗布すること(ケミカルピーリング)で黒ずみを除去することができます。塗布後しばらくすると歯茎が薬液に反応し、一時的に口内炎のように白く浮かび上がります。数日経つと、歯肉が自然にはがれ始めることでピンク色の歯茎が出てきます。治療前には表面麻酔(塗り薬)をおこなうため、治療中の痛みはほとんどありません。治療は数分で終わるので、気軽に受けていただけます。
■メタルタトゥーはレーザー治療で除去できる
メタルタトゥーが原因で歯茎が黒くなっている場合は、レーザー治療によって除去することができます。これは、レーザーが黒色に反応する性質を活かし、歯茎のメタルタトゥーの部分のみを除去する仕組みです。治療後しばらくすると、元のピンク色の歯茎に戻ります。治療前には注射で浸潤麻酔をおこなうため、治療中に痛みを感じることはほとんどありません。
また、黒ずみの再発を防止するためには、レーザー治療と合わせて、メタルタトゥーの原因となる金属を使用していない補綴物に取り換えることをおすすめします。
■歯周病治療で健康的な色の歯茎に戻る
歯周病による排膿が原因で歯茎が黒ずんでいる場合は、少なくとも歯周病が中度以上に進行している可能性が高いです。そのため、歯周病治療によって歯周病を改善することが先決です。歯周病治療の基本は、毎日のブラッシングと歯科医院での治療によって口腔内に溜まったプラーク(歯垢)や歯石を徹底的に取り除くこと。プラークや歯石を除去して、口腔内の細菌を減らすことができれば歯周病は治ります。そして、歯周病が治れば歯茎は再び健康的なピンク色に戻ります。
歯周病は「沈黙の病気」とも呼ばれるほど自覚症状に乏しく、異変に気付いたときにはかなり進行していることも珍しくありません。口腔内から発せられる小さな危険信号を見落とさないことが大切です。歯周病が原因で歯茎が黒くなっている場合、見た目の問題だけでは済まされません。できるだけ早めに、信頼できる歯科医院を受診するようにしましょう。
その他の対処法
■禁煙
喫煙が原因で歯茎が黒ずんでいる場合、根本的な解決法は言うまでもなく「禁煙」です。レーザーやガムピーリングなどの施術でも歯茎の黒ずみを解消できますが、タバコを吸っていたら再び同じように色素沈着を起こしてしまいます。ピンク色のきれいな歯茎をキープするためには、禁煙が必須です。
健康な歯茎とは?
歯茎がきれいだと、見た目が美しいだけでなく健康的な印象を与えます。逆に、歯茎が黒ずんでいると見た目が悪いだけでなく不健康なイメージを持たれてしまいます。一般的には、以下のような歯茎が健康な歯茎だとされています。
・全体的に薄いピンク色をしている。
・歯と歯茎が密着しており、歯茎が引き締まっている。
・歯茎に黒ずみがない。
・歯茎から血が出ていない。
・歯茎が痩せて、下がっていない。
健康な歯茎はピンク色で弾力があり、引き締まっているのが特徴です。普段は意識することが少ないかもしれませんが、歯磨きをしているときなどに鏡で歯茎をチェックしてみましょう。当てはまる項目が多いほど健康的な歯茎だと言えます。逆に、当てはまらない人は歯周病などのトラブルが起きている可能性があるため、一度、歯科医院を受診するようにしましょう。
歯が黒い?汚れ・虫歯・歯石など原因別の対処法
よくある質問
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Q.喫煙は歯周病によくないのですか?
A.喫煙される方は歯周病になるリスクが高まります。
タバコの喫煙本数が増えるほど歯周病になりやすくなることが明らかになっています。タバコのニコチンに含まれる有害物質は免疫機能や細胞の働きを阻害するので歯周病の進行を早め、治りにくくしてしまいます。
また、歯茎からの出血を抑えたり、歯茎を硬くすることで症状に気づきにくいことなどが挙げられます。つまり、タバコは歯周病の進行を早め、歯周病になりやすくするばかりでなく、症状に気づきにくく、治りづらくする原因と言えます。
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Q.お酒は歯周病を悪化させますか?
A.お酒自体が歯周病を悪化させるということはありません。
飲酒をすると、ついつい寝る前のブラッシングを怠けてしまいがちです。「お酒を飲んだ夜はブラッシングをせずに寝てしまう」という方はブラッシングをしないことで、結果的に、歯周病を発症してしまった、という“間接的な要因”としてお酒が歯周病を悪化させるということは言えると思います。
歯周病の治療方法
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監修者情報
公開日:2019年10月23日
更新日:2024年1月22日
清水智幸(しみずともゆき)
東京国際クリニック/歯科 院長
歯学博士。日本歯科大学卒業後、近代歯周病学の生みの親であるスウェーデン王立イエテボリ大学ヤン・リンデ名誉教授と日本における歯周病学の第一人者 奥羽大歯学部歯周病科 岡本浩教授に師事し、ヨーロッパで確立された世界基準の歯周病治療の実践と予防歯科の普及に努める。歯周病治療・歯周外科の症例数は10,000症例以上。歯周病治療以外にも、インプラントに生じるトラブル(インプラント周囲炎治療)に取り組み、世界シェアNo.1のインプラントメーカー ストローマン社が開催するセミナーの講師を務めるなど、歯科医師の育成にも力を入れている。
・日本歯周病学会 認定医
・日本臨床歯周病学会 認定医
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