2024.01.22
虫歯だけじゃない、キシリトール入りガムを噛んで歯周病予防ができる?
ガムを噛むことで口腔内の自浄作用に期待が持てる
虫歯予防にはキシリトール入りのガムを噛む……。テレビのCMなどで多くの方が耳にしたことのある情報ではないでしょうか? 「キシリトール配合のガムを食べれば虫歯にならない」というわけではありませんが、ある程度の効果があることは実証されています。今回は、キシリトール入りのガムの効果と、気になる歯周病予防の効果についてもご紹介します。
キシリトール入りのガムがおすすめ!
さまざまな種類のガムが販売されていますが、よく耳にする「キシリトール」は、口腔内の細菌による酸の生産がほとんど行われない非う蝕性甘味料として知られ、虫歯の発生を防ぐ効果が証明されています。キシリトールは白樺(しらかば)や樫の木から採れるキシランヘミセルロースを原料に作られる人工の甘味料で、砂糖と同じ甘味を持ち、口腔内に入れると味覚が刺激され、唾液の分泌を促します。また、ガムを噛む(咀嚼)により唾液の分泌を促進します。キシリトールは厚生労働省から食品添加物として認可を受けており、十分な安全性が確認されています。
キシリトールガムを噛むタイミングは食後がベスト
キシリトールガムを噛み始めるタイミングは、食後が望ましいでしょう。食事の後は歯面が「脱灰」(※)しやすい環境になりますが、唾液によって溶けた歯面を修復する作用のことを「再石灰化」と呼びます。実は、これらは食事のたびに何度も繰り返されており、再石灰化による修復が間に合わないと、歯の表面に次第に穴が開いていくのです。それが虫歯の始まりです。
※だっかい:酸により歯が溶ける現象をいいます。
キシリトール100%のガムを選ぼう
一般的なガムには虫歯の原因成分となる糖分が甘味料として多く使われており、噛むことで歯の表面に付着しています。食後の歯磨き(ブラッシング)が不十分な場合は、かえって細菌に餌をあげているようなもの。また、市販のキシリトールガムには甘さを出すために糖分が含まれている商品も多いので、虫歯予防効果の高い、キシリトール100%配合の歯科医院専売品である「歯科医院専用ガム」を選ぶことをおすすめします。
キシリトール入りの歯科医院専用ガムは糖分を含んでおらず、虫歯の原因となる酸などを作らないことから虫歯の発生を防ぐ効果があります。また、ガムを噛むことで唾液分泌を促進し、溶けた歯面を修復する再石灰化にも役立ちます。ただし、ここで理解しておく必要があるのは、「キシリトールガムを噛むことで虫歯や歯周病が治るわけではない」という点です。
キシリトールガムと歯磨きを組み合わせて予防効果を高めよう
キシリトールガムは虫歯予防に効果的ですが、あくまでも補助的なものと考えましょう。口腔内の環境を、よい状態に保つという予防の意識を持つのはとても大事ですが、基本は機械的に歯垢(プラーク)を除去することが、口腔内の健康維持につながります。
口腔内の健康を守る重要な要素は、正しい歯磨き(ブラッシング)と歯科医院で行う定期的なメンテナンスです。自分で予防を心掛ける場合は、キシリトールガムと合わせてしっかりとした歯磨きを行いましょう。歯科医院の定期検診で歯周ポケット(歯と歯茎の隙間)に溜まった歯垢を除去してもらうことで、歯周病の進行を食い止められます。どちらにせよ、あくまでも補助的な役割としてキシリトールガムを噛み、口腔内環境を整えることが大切なのです。
よくある質問
歯周病を治さないでいると、どうなるのでしょうか?
歯周病を放置していると歯を支えている顎の骨がどんどん溶かされていき、最終的には歯が抜け落ちてしまいます。また、歯周病菌が血流に乗って全身を巡ることで、様々な全身疾患の引き金になることが分かっています。たとえば、糖尿病が悪化したり、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こしたりすることがあるので、注意が必要です。その他、誤嚥性肺炎や骨粗鬆症、腎炎や関節炎の原因になるほか、妊婦さんの場合は、早産や低体重児出産のリスクが高くなることも明らかになっています。
歯周病の治療方法
歯周病治療は、具体的にどのようなことをするのでしょうか?
歯周病治療の基本は、原因であるプラークや歯石を取り除く治療が中心になります。軽度の歯周病であれば、スケーリングやデブライドメントなどの非外科処置でプラーク・歯石を取り除いていきます。歯周病が中度や重度にまで進行している場合は、歯周ポケットの奥深くにまでプラーク・歯石がこびり付いているため、歯茎を切開してプラーク・歯石を除去する外科処置をおこなう場合もあります。歯周病治療の詳細は以下のページをご覧ください。
歯周病の治療方法
監修者情報
公開日:2019年10月22日
更新日:2024年1月22日
清水智幸(しみずともゆき)
東京国際クリニック/歯科 院長
歯学博士。日本歯科大学卒業後、近代歯周病学の生みの親であるスウェーデン王立イエテボリ大学ヤン・リンデ名誉教授と日本における歯周病学の第一人者 奥羽大歯学部歯周病科 岡本浩教授に師事し、ヨーロッパで確立された世界基準の歯周病治療の実践と予防歯科の普及に努める。歯周病治療・歯周外科の症例数は10,000症例以上。歯周病治療以外にも、インプラントに生じるトラブル(インプラント周囲炎治療)に取り組み、世界シェアNo.1のインプラントメーカー ストローマン社が開催するセミナーの講師を務めるなど、歯科医師の育成にも力を入れている。
・日本歯周病学会 認定医
・日本臨床歯周病学会 認定医
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