2024.01.22
知覚過敏 – 歯がしみる原因と予防法とは?
知覚過敏とは?
知覚過敏とは、むし歯ではないのに「歯がしみる」症状のことを言います。冷たいものや熱いものを口にしたとき、酸っぱいものや甘いものを口にしたとき、歯ブラシが触れたとき、風が当たったときなどに、しみる症状を覚えたりキーンとした鋭い痛みを覚えたりするのが主な症状です。
知覚過敏は短期間で軽減・改善するケースが多いものの、なかには症状が長引く場合もあります。たとえば、歯周病によって歯茎が退縮して歯根部の象牙質が露出することで知覚過敏が起きるケースがありますが、このような場合は知覚過敏の症状が長く続きます。
知覚過敏の原因
私たちの歯は、外側から「エナメル質」→「象牙質」→「神経」という構造になっています。通常であれば、象牙質はエナメル質に覆われていますが、何らかの理由で象牙質が露出してしまうことがあり、露出した象牙質に外部から刺激が加わることで知覚過敏は起こります。
象牙質はやわらかい組織で、無数の細かい孔(象牙細管)が歯の中心に向かって伸びています。そのため、象牙質がむき出しになると、外部からの刺激が象牙細管を通って神経にまで伝わり、瞬間的にしみる症状が出たり痛みが出たりするのです。
象牙質が露出してしまう原因としては、大きく「エナメル質の摩耗・損傷」と「歯茎の退縮」が考えられます。
・エナメル質の摩耗・損傷
歯の表面を覆っているエナメル質が摩耗したり損傷したりすると、内側にある象牙質が露出します。その結果、知覚過敏を引き起こすことがあります。よくあるケースは以下の3つです。
歯ぎしりや過度なブラッシングでエナメル質がすり減る
エナメル質は非常に硬い組織ですが、歯ぎしりや食いしばりのクセがあると少しずつエナメル質がすり減っていき、やがて象牙質が露出してしまいます。また、過度なブラッシングによってもエナメル質はすり減ってしまいます。頻繁に歯を磨いたり強い力でゴシゴシ磨いたりしていると、徐々にエナメル質が摩耗して、結果的に知覚過敏を引き起こしてしまうことがあるので要注意です。
酸性の飲食物によってエナメル質が溶ける
上述のとおり、エナメル質は非常に硬い組織ですが「酸」には弱く、pH5.5以下の酸性になると溶けはじめます。酸が強い飲食物を好む方は口腔内が酸性に傾きがち。そのため、エナメル質が溶かされて象牙質が露出し、知覚過敏を招いてしまうケースもあります。このように、酸で溶かされた歯のことを「酸蝕歯(さんしょくし)」と言います。具体的に酸性が強い飲食物としては、お酢、ワイン、レモンなどの柑橘類、スポーツドリンク、炭酸飲料、ケチャップ、ドレッシングなどが挙げられます。
衝突・転倒などでエナメル質が破折する
スポーツ中の衝突や転倒などによって歯をぶつけると、歯が欠けたり、歯にヒビが入ったりすることがあります。このようにエナメル質が物理的にダメージを受けることで象牙質が露出するケースもあり、適切な処置を受けずにいると知覚過敏を引き起こすことがあります。
・歯茎の退縮
歯冠部(歯肉より上にある歯)は表面にエナメル質がありますが、歯根部(歯肉より下にある歯)にはエナメル質がありません。そのため、歯茎が下がる(退縮する)と、それまで歯茎で隠れていた歯根部のエナメル質が露出して知覚過敏を引き起こすことがあります。
歯周病の進行によって歯茎が退縮する
歯周病とは、プラーク(歯垢)に潜む歯周病菌によって歯茎や顎の骨などの歯周組織に炎症が起きる病気のことです。歯周病が進行すると徐々に歯を支える骨が溶かされ、その上にある歯茎も下がっていきます。歯茎の位置が下がると、エナメル質のない歯根部の象牙質が露出するため、知覚過敏の症状が出やすくなります。よくあるケースは以下の3つです。
過度なブラッシングによって歯茎が退縮する
上述のとおり、過度なブラッシングはエナメル質が摩耗する原因になりますが、同時に、歯茎が退縮する原因にもなります。頻繁に歯を磨いたり強い力でゴシゴシ磨いたりしていると、徐々に歯茎の位置が下がっていき、象牙質が露出して知覚過敏を引き起こすことがあります。
加齢によって歯茎が退縮する
私たちの歯茎は、加齢によっても退縮します。年を重ねるほど歯茎の位置が下がっていき、象牙質がむき出しの状態になるため、知覚過敏を引き起こしやすくなります。
歯周病で下がった歯茎は元どおりになるの?
ホワイトニングで知覚過敏は起きる!?
ホワイトニングの施術中に「しみる」症状を訴える方がいます。この症状は知覚過敏に似たものですが、厳密には知覚過敏ではありません。ホワイトニングで使われる薬剤が歯の内部にまで浸透して、神経に刺激を与えることが原因で一時的にしみる症状が現れるのです。エナメル質の摩耗・損傷や歯茎の退縮がなければ、ホワイトニングの終了によって症状は治まるでしょう。
知覚過敏の治療法
以下は、知覚過敏の代表的な治療法です。根本の原因を取り除く治療と、症状の緩和を図る処置に分かれます。
・歯周病治療
歯周病で歯茎が下がって知覚過敏になっている場合は、歯周病治療をおこないます。歯周病の原因はプラークなので、口腔内から徹底的にプラークを除去していくのが歯周病治療の基本です。東京国際クリニック/歯科では、「PERIOD.(ペリオド)」という世界基準の歯周病治療をご提供しています。
>> 歯周病治療PERIOD.の詳細はこちら
なお、歯周病によって下がった歯茎の見た目を回復する「歯茎の再生治療」にも対応しています。
>> 歯茎の再生治療の詳細はこちら
・知覚過敏専用の歯磨き粉
知覚過敏専用の歯磨き粉を使うことで、症状の緩和を図る方法です。知覚過敏専用の歯磨き粉には「硝酸カリウム」という成分が配合されています。硝酸カリウム(カリウムイオン)には象牙質を保護する働きがあるため、使い続けることで知覚過敏の症状緩和が期待できます。
・象牙質のコーティング
露出した象牙質を専用の樹脂でコーティングして保護する方法です。物理的に象牙質・神経に刺激が伝わるのを防ぎ、知覚過敏の症状緩和を図ります。
・ナイトガード
歯ぎしりや食いしばりによってエナメル質が摩耗して知覚過敏を起こしている場合は、就寝中に「ナイトガード(マウスピース)」を着用することでエナメル質がすり減るのを防ぎます。歯ぎしりや食いしばりのクセを根本的に改善する方法ではありませんが、エナメル質の摩耗を防ぎ、知覚過敏の進行をストップさせる効果は期待できます。
・レーザー治療
露出した象牙質にレーザーを照射することで、歯がしみる症状を軽減することができます。
知覚過敏の予防法
知覚過敏を予防するには、知覚過敏のリスクを排除するしかありません。知覚過敏のリスクとは、上述した「歯周病」「過度なブラッシング」「酸性の飲食物」「歯ぎしり・食いしばり」など。日々の生活で、これらのリスクを低減することが大切です。
・歯周病を予防する
歯根部の象牙質の露出を防ぐには、歯周病を予防することが重要です。歯周病の原因はプラークなので、歯周病を予防するにはプラークコントロール、つまり毎日のブラッシングが必須になってきます。できるだけ磨き残しを少なくできるよう、一度、歯科医院でTBI(ブラッシング指導)を受けて正しいブラッシング方法を身につけましょう。
・過度なブラッシングを避ける
ブラッシングの目的はプラークを取り除くことですが、ゴシゴシと力を入れて磨かなくてもプラークは除去できます。正しいブラッシング方法を身につけるには、歯科医院でTBI(ブラッシング指導)を受けるのがおすすめです。TBIを受けることで、エナメル質や歯肉にダメージを与えずにプラークを効率的に除去できる磨き方を習得できます。
・酸性の飲食物を控える
酸によってエナメル質が溶けるのを防ぐには、酸を多く含む飲食物を控えるのが一番です。お酢、ワイン、レモンなどの柑橘類、スポーツドリンク、炭酸飲料、ケチャップ、ドレッシングなどを摂取することが多い方は、食習慣を見直してみましょう。摂取した後、早めに口をゆすいだり歯を磨いたりすることも大切です。
・歯ぎしり・食いしばりのクセをなくす
歯ぎしり・食いしばりの原因は明確になっていませんが、原因の一つはストレスだと言われています。日頃から、ストレス解消に努めるようにしましょう。同時に、歯ぎしり・食いしばりによるエナメル質の摩耗を防ぐには、ナイトガード(マウスピース)の装着も重要です。ナイトガードは「型取り」「受け取り」の2回の通院で作製できるので、一度、歯科医院に相談してみましょう。
まとめ
歯がしみたり、キーンとした鋭い痛みを覚えたりする場合は知覚過敏が疑われますが、むし歯の可能性もあります。また、上述のとおり歯周病が進行している可能性もあります。「知覚過敏くらいすぐに治るだろう」と自己判断せず、異常を感じたら一度、歯科医院を受診するようにしましょう。症状が軽いうちに適切な対処をすることが、口腔内全体の健康維持につながります。
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監修者情報
公開日:2019年12月18日
更新日:2024年1月22日
清水智幸(しみずともゆき)
東京国際クリニック/歯科 院長
歯学博士。日本歯科大学卒業後、近代歯周病学の生みの親であるスウェーデン王立イエテボリ大学ヤン・リンデ名誉教授と日本における歯周病学の第一人者 奥羽大歯学部歯周病科 岡本浩教授に師事し、ヨーロッパで確立された世界基準の歯周病治療の実践と予防歯科の普及に努める。歯周病治療・歯周外科の症例数は10,000症例以上。歯周病治療以外にも、インプラントに生じるトラブル(インプラント周囲炎治療)に取り組み、世界シェアNo.1のインプラントメーカー ストローマン社が開催するセミナーの講師を務めるなど、歯科医師の育成にも力を入れている。
・日本歯周病学会 認定医
・日本臨床歯周病学会 認定医
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