2024.01.23
インプラント治療とは?メリット・デメリットや注意点
インプラント治療とは?
インプラント治療とは、人工歯根を埋め込むことによって失ってしまった歯を補う治療法です。具体的には、歯を失ってしまった部分の顎の骨にインプラント(人工歯根)を埋入して、その上に人工歯(上部構造)を被せます。
従来、むし歯や歯周病などで失ってしまった歯を補う治療法としては入れ歯やブリッジが一般的でしたが、近年はこれらに代わってインプラント治療が主流になっています。なぜなら、インプラントには以下のように優れた特長があるからです。
インプラントのメリット
入れ歯やブリッジと比較して、インプラント治療には様々なメリットがあります。インプラントの主なメリットについて解説しましょう。
■メリット① しっかり噛める
入れ歯やブリッジでも噛む機能自体は回復できますが、噛む力は天然歯に比べ大きく低下します。そのため、固いものや肉などの弾力のあるものが噛みにくく、食べるのに苦労する方も少なくありません。
一方で、インプラント治療は人工歯根が顎の骨にしっかりと固定されるため、天然歯とほとんど変わらない噛む力・噛み心地を得られます。安定感に優れたインプラントなら、歯ごたえのある食べ物でもまるで自分の歯のような感覚で食べることができます。
■メリット② 他の歯に負担がかからない
一般的な部分入れ歯は隣の歯にバネをかけて固定するため、隣の歯に負担がかかります。また、ブリッジも隣接する健康な歯を削らなければいけません。いずれの治療法も残っている歯に負担をかけるため、本来健康だった歯の寿命が短くなってしまうリスクがあります。
一方で、インプラントは他の歯ではなく顎の骨を土台にします。独立して機能するため、他の健康な歯に負担をかけることがありません。
■メリット③ 顎の骨が痩せにくい
歯を失ってしまった部分は、噛んだときの力が顎の骨に伝わらなくなるため、顎の骨が少しずつ痩せていきます。入れ歯やブリッジを入れたとしても、歯が抜けた部分の顎の骨には噛む力が伝わらないため、次第に骨が痩せていき、歯並びや噛み合わせが乱れてしまうリスクがあります。
一方で、インプラントは顎の骨に直接、人工歯根を埋め込みます。天然歯で噛むときと同じように顎の骨にダイレクトに力が加わるため、顎の骨が痩せる心配がありません。
■メリット④ 見た目が自然になる
入れ歯やブリッジの場合、固定するための金属のバネが見えてしまったり、素材が目立ってしまったりすることがあります。特に保険治療の入れ歯やブリッジは、審美的に不自然に見えるケースが多々あります。
一方で、インプラントは審美性に優れたセラミックの人工歯を装着するため、天然歯とほとんど変わらない自然な口元に仕上がります。周囲からも、インプラントをしているように見えることはありません。
■メリット⑤ 取り外す煩わしさがない
一般的な入れ歯は、取り外してお手入れをする必要があります。毎日のことなので、煩わしく感じる方も少なくありません。
一方で、インプラントは顎の骨にしっかりと固定されます。天然歯と同じように毎日のブラッシングは必要ですが、取り外して洗浄するような手間はかかりません。
インプラントのデメリット
上述のように、インプラント治療には多くのメリットがありますが、デメリットがないわけではありません。一般的に、以下のような点がインプラントのデメリットとして挙げられます。
■デメリット① 治療費の負担が大きい
インプラント治療は自費治療なので健康保険が適用されず、治療費は全額自己負担になります。保険適用の入れ歯やブリッジに比べ高い費用がかかるのがネックになって、インプラント治療をためらっている方もいるかもしれません。
とはいえ、インプラントは正しいブラッシングと歯科医院での定期的なメンテナンスによって、長期にわたって使っていくことができます。長期的に見れば、必ずしも高額な治療とは言えないでしょう。
なお、クレジットカード払いやデンタルローンなどに対応している歯科医院であれば、一度にまとめて高額な料金を支払う必要はありません。また、インプラント治療は医療費控除の対象になります。医療費控除とは、1年間で支払った医療費が10万円を超える場合に、医療費が控除され税金が還付される制度です。詳細は以下のページを参照してください。
>> 医療費控除に関するご案内
■デメリット② 治療期間が長い
インプラント治療は、入れ歯やブリッジに比べ治療期間が長くなる傾向にあります。口腔内の状態や埋入するインプラントの部位・本数などによって変わってきますが、早くても3ヶ月、長い場合は1年ほどかかります。
■デメリット③ 外科手術が必要である
インプラント治療は、顎の骨にインプラントを埋め込む手術が必要になります。外科手術に対する恐怖感から、インプラント治療をためらっている方もいるでしょう。もちろん、インプラントの埋入手術では局所麻酔を使うため痛みを感じることはありませんが、外科手術である以上、術後一定期間は痛みや腫れが出る可能性があります。
なお、外科手術に対する恐怖感が強い方は、局所麻酔に加えて「静脈内鎮静法」という麻酔を使います。静脈内鎮静法は、腕の静脈から鎮静薬を注入することで不安や恐怖心を軽減させる麻酔法。うっすらとした意識のなかで眠っているような感覚になるため、リラックスした状態でインプラント治療を受けることができます。
■デメリット④ 誰でもインプラント治療を受けられるわけではない
インプラント治療はすべての人が受けられるわけではありません。たとえば、免疫不全や重度の糖尿病などの全身疾患がある方、歯周病にかかっている方や顎の骨が足りない方など、インプラント治療ができないケースもあります。インプラント治療を受けられないケース(禁忌症)は、以下のページで詳しく解説しています。
>> インプラント治療を受けられないケースはこちら
■デメリット⑤ メンテナンスが必須である
インプラントはむし歯にはなりませんが、「インプラント周囲炎」という歯周病と同じような病気にかかることがあります。インプラント周囲炎にかかると歯茎や顎の骨に炎症を起こし、最終的にはインプラントが使えなくなってしまいます。
>> インプラント周囲炎とは?
インプラントを長く使い続けていくためには、インプラント周囲炎にならないことがもっとも重要。そのためには、毎日のブラッシングに加え、定期的に歯科医院でメンテナンスを受ける必要があります。
インプラント手術を受ける際の注意点
インプラント手術を受ける際の一般的な注意点は以下のとおりです。その他、患者さまによっては固有の注意点がある場合もあります。
■インプラント手術前日・当日の注意点
- 前日は十分な睡眠をとり、体調を整えてください。
- 当日はゆったりとした服装でお越しください。
- 静脈内鎮静法をおこなう場合は、手術の4時間前までに食事を済ませておいてください。
- 静脈内鎮静法をおこなう場合は、帰宅時に車やバイク・自転車の運転ができないため、公共交通機関を利用してお越しください。
■インプラント手術後の注意点
- 術後に痛みや腫れがある場合は、処方された痛み止めを服用してください。通常は1週間程度で収まります。
- 処方された抗生物質は医師の指示に従って服用してください。
- 術後数日は若干の出血がある場合がありますが、強くうがいをしないようにしてください。
- 術後数日の食事は、おかゆや雑炊、スープなど、できるだけやわらかい食べ物を食べるようにしてください。また、できるだけ手術部位の反対側で噛むようにしてください。
- 当日の入浴はシャワーで済ませるようにしてください。
- 当日は飲酒や激しい運動はお控えください。
- 術後しばらくは喫煙をお控えください。喫煙をすると歯茎の炎症が起こりやすくなるほか、血流が悪くなるため、骨の新陳代謝を阻害されます。
- 術後数日は、できるだけ舌や指で手術部位を触らないようにしてください。
- 術後数日のブラッシングは、できるだけ手術部位を刺激しないようにしてください。ただし、口腔内が不衛生になってはいけません。やさしい力で丁寧にブラッシングするほか、うがい液なども併用して口腔内を清潔に保ってください。
まとめ
入れ歯やブリッジに比べると、インプラントはメリットの大きい治療だと言えますが、どんな場合でも最善の治療法であるとは限りません。たとえば、「口腔内のインプラントが4本以上になると、インプラント周囲炎になる確率が約15倍になる」というデータがあります。このリスクを踏まえると、すでにインプラントを入れている方は、他の治療法を選択したほうがいいケースもあるでしょう。
今は、多くの歯科医院でインプラント治療が受けられるようになっていますが、インプラント治療だけを勧めてくるような医院は避けるべきです。歯周病の有無や口腔内環境、年齢などを考慮したうえで、最善の治療法を提案してくれる歯科医院を選ぶようにしましょう。
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監修者情報
公開日:2020年1月9日
更新日:2024年1月23日
清水智幸(しみずともゆき)
東京国際クリニック/歯科 院長
歯学博士。日本歯科大学卒業後、近代歯周病学の生みの親であるスウェーデン王立イエテボリ大学ヤン・リンデ名誉教授と日本における歯周病学の第一人者 奥羽大歯学部歯周病科 岡本浩教授に師事し、ヨーロッパで確立された世界基準の歯周病治療の実践と予防歯科の普及に努める。歯周病治療・歯周外科の症例数は10,000症例以上。歯周病治療以外にも、インプラントに生じるトラブル(インプラント周囲炎治療)に取り組み、世界シェアNo.1のインプラントメーカー ストローマン社が開催するセミナーの講師を務めるなど、歯科医師の育成にも力を入れている。
・日本歯周病学会 認定医
・日本臨床歯周病学会 認定医
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