2024.01.22
歯周病治らないはウソ!歯周病は治る病気です
「歯周病は治らない病気」というのは本当ですか?(50代 Gさん)
Gさん:
中度の歯周病という診断を受け、担当医からは「歯周病は治らないから、重症化する前に抜歯してインプラントにしたら」と言われました。
清水院長:
歯周病専門医として最初に断言しますが、「歯周病は治る病気」です。歯周病はプラーク(歯垢)に潜む歯周病菌によって歯茎に炎症が起きる感染症ですから、原因となるプラークを除去すれば炎症も収まり、歯周病は治ります。
Gさん:
私の場合、歯周ポケットの深さが5mmということでしたが、歯を抜かずに済むのでしょうか?
清水院長:
歯周ポケットの深さは歯周病の進行程度を知る目安にはなりますが、診断においてもっとも重要なのは、「炎症があるかどうか」ということです。炎症があるかどうかを見極めるうえで分かりやすいのが「出血の有無」です。たとえば、深さ2mmで出血のある歯周ポケットと、深さ4mmで出血のない歯周ポケットがあったら、歯周病専門医は前者を歯周病、後者は歯周病ではないと判断します。つまり、歯周ポケットの深さだけでは正しい診断はできないということです。実際に歯周病で、歯周ポケットの深さが5mmあっても、症状によっては正しいブラッシングと適切な治療で抜歯することなく治せるケースは多々あります。
Gさん:
逆に、歯周病で抜歯するのはどんな場合ですか?
清水院長:
歯周病があまりにも進行しすぎてしまった場合などは、必ずしもすべての歯を残せるとは限りません。骨がほとんど残っていない状態であったり、予後を考えると抜歯したほうがいいケースもあります。当院が歯周病において抜歯を選択するのは主に次のケースです。
・歯根の先まで完全に骨がなくなっている場合
・根分岐部の骨(歯根と歯根の間にある骨)がほぼなくなっている場合
・骨が数ミリ残っていたため歯を残したが、歯の揺れがあり、噛むと痛みがある場合
とはいえ、抜歯はあくまでも最終手段と考えてください。ご自身の歯を残せる可能性があるなら、安易に抜歯を選択すべきではありません。
Gさん:
歯周病を治すには、今の歯科医院に通い続けるより別の医院を受診したほうがいいでしょうか?
清水院長:
今の担当医に、本当に「歯周病は治らない」という言い方をされたのでしたら、ぜひセカンドオピニオンを受けてください。歯周病は治る病気であるにもかかわらず、ドクター自身が「治らない」と言っているのであれば、当然、そのドクターに歯周病を治せる可能性はありません。
Gさん:
セカンドオピニオンでは、どのようなことに注意すべきですか?
清水院長:
セカンドオピニオンでは、「他院で抜歯を勧められたが、抜いてしまう前に本当に残せない歯なのか?」ということをしっかり確認すべきです。現在の状況についての説明を受け、今後の治療方針や治療計画を確認しましょう。不安や疑問があったら、納得できるまで質問してください。
歯周病治療の終わりが見えない・・・(60代 Hさん)
Hさん:
かかりつけ医は真撃に治療してくれていると思うのですが、歯周病が一向に治る気配がありません。終わりが見えず不安です。
清水院長:
歯周病はプラーク(歯垢)に含まれる細菌による感染症ですから、原因となるプラークを取り除き、口腔内から細菌を除去すれば必ず治ります。
Hさん:
歯周病の治療を開始して2年が経ちますが、こんなに長くかかるものなのでしょうか・・・?
清水院長:
一般的な歯科医院での歯周病治療は、口腔内を6つのブロックに分割して、1回の通院で1つのブロックを治療していくので、何回も通院する必要があります。その間、ブラッシングが適切にできていないと、細菌を除去してきれいにしたブロックに再び細菌が付着してしまいます。4回目の治療のときには、1回目に治療したブロックに再びプラークが溜まっているというように「イタチごっこ」になってしまうわけです。これが、2年経っても歯周病が治らない大きな要因の一つでしょう。歯周病というのは、歯科医院の治療だけで治すのは困難であり、日々、正しいブラッシングで細菌を除去できていることが大前提になります。
Hさん:
毎日、ちゃんとブラッシングをしているつもりなのですが・・・。
清水院長:
みなさんそうおっしゃいますが、実際にプラークをきちんと除去できている人は多くはありません。ブラッシングを「している」と「できている」は別問題であり、「しているけどできていない」方が大半です。ブラッシングの目的は、プラークを除去することです。1日3回、時間をかけて歯を磨いていても、プラークの取り残しが多ければ口腔内の細菌が減らないので、歯周病の治りも悪くなってしまいます。今、受診している歯科医院で、ブラッシング指導を受けることはありませんか?
Hさん:
歯磨きのことは言われますが、ブラッシング指導を受けたことはありません。
清水院長:
ブラッシングを患者さん任せにしているようでは、いつまで経っても歯周病は治りません。一度、別の医院でセカンドオピニオンを受けてみてはいかがでしょうか。
Hさん:
セカンドオピニオンはどんな医院で受けるのがいいですか?
清水院長:
歯周病治療は非常に専門性が高い分野なので、歯周病専門医を受診するのがいいでしょう。なおかつ、ブラッシングを重視している歯科医院をおすすめします。繰り返しになりますが、ブラッシングができるようにならないと歯周病治療は成功しません。確実に歯周病を治したいなら、ブラッシングの重要性を認識しており、正しいブラッシングを習得できるまで患者さんを指導している歯科医院を選ぶようにしましょう。
監修者情報
公開日:2020年11月2日
更新日:2024年1月22日
清水智幸(しみずともゆき)
東京国際クリニック/歯科 院長
歯学博士。日本歯科大学卒業後、近代歯周病学の生みの親であるスウェーデン王立イエテボリ大学ヤン・リンデ名誉教授と日本における歯周病学の第一人者 奥羽大歯学部歯周病科 岡本浩教授に師事し、ヨーロッパで確立された世界基準の歯周病治療の実践と予防歯科の普及に努める。歯周病治療・歯周外科の症例数は10,000症例以上。歯周病治療以外にも、インプラントに生じるトラブル(インプラント周囲炎治療)に取り組み、世界シェアNo.1のインプラントメーカー ストローマン社が開催するセミナーの講師を務めるなど、歯科医師の育成にも力を入れている。
・日本歯周病学会 認定医
・日本臨床歯周病学会 認定医
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