2022.02.22
むし歯を放置すると発生する頭痛の原因とは?
むし歯になると、冷たいものや甘いものが歯にしみるようになったり歯に痛みが生じたりします。このような症状にまで進行したむし歯は自然治癒することはありません。放置していると、口腔内の症状だけでなく頭痛を引き起こすこともあります。今回は、むし歯を放置することで起こる頭痛について解説していきます。
むし歯 → 緊張型頭痛
むし歯を放置していると、緊張型頭痛を引き起こす場合があります。緊張型頭痛は、後頭部を中心に鈍い痛みや締め付けられるような重たい感覚を覚える慢性頭痛の一種です。首や肩の凝りをともなうのも特徴です。
緊張型頭痛は、身体的もしくは精神的なストレスによって引き起こされます。ストレスによって首や肩の筋肉が凝り、血行不良から頭痛が発生すると考えられています。むし歯の症状はストレスの原因になり、それが緊張型頭痛を引き起こしているケースも少なくありません。その他、疲労の蓄積やデスクワークなどで同じ姿勢をとり続けること、仕事のプレッシャーや家庭の悩みなどによるストレスで緊張型頭痛を招くことも多々あります。
なお、むし歯に関して言えば、顎の筋肉が硬直することで緊張型頭痛が引き起こされるといった側面もあります。むし歯があると、私たちはむし歯を避けて噛むようになります。それが続くと顎の筋肉に偏った負荷がかかるようになり、バランスが崩れることで筋肉が硬直して緊張型頭痛が起こるのです。
■頭痛を改善するには・・・
緊張型頭痛は入浴やマッサージで筋肉の凝りをほぐすことで改善しますが、根本の原因はストレスなので、ストレスを緩和・解消しないことには根本的な改善には至りません。むし歯がストレスの原因になっているのであれば、むし歯の治療が先決です。もちろんストレスの原因は一つとは限らず複数の原因があるケースも多いので、生活習慣全般を見直すことも重要です。
むし歯 → 顎関節症 → 頭痛
むし歯を放置していると、顎関節症を起こす場合があります。顎関節症は口を開けたときに顎関節に違和感や痛みを覚える病気ですが、症状がひどくなるとこめかみや側頭部にかけて頭痛をともなうこともあります。
顎関節症の原因は様々で、乱れた噛み合わせやストレスからくる顎の筋肉の緊張、頬づえや歯ぎしり、唇や頬の内側を噛むクセ、食いしばりや片側の歯ばかりで噛むクセ、うつぶせ寝の習慣や猫背なども原因になると言われています。そして、むし歯から顎関節症になるケースも少なくありません。むし歯になると、むし歯をかばうように噛むようになるため不自然な噛み癖がつき、噛み合わせにズレが生じてしまうことがあるからです。
■頭痛を改善するには・・・
頭痛を改善するためには、顎関節症を治さなければいけません。歯科医院で顎関節症の治療を受けるのはもちろん、むし歯が一因になっているのであればむし歯治療も不可欠です。顎関節症を放置していると徐々に顎のゆがみが大きくなり、口を開けるだけで激痛をともなうようになるケースもあるので、早めの受診をおすすめします。
顎関節症の治療法に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
>> 顎関節症の主な原因である噛み合わせの改善と予防方法
むし歯 → 上顎洞炎 → 頭痛
むし歯を放置していると上顎洞炎(じょうがくどうえん)を発症して、それが頭痛の原因になることがあります。
上顎洞炎は、鼻の両横の奥にある鼻腔とつながった空洞(上顎洞)に炎症が起きる病気です。上顎洞炎は、風邪やインフルエンザ、アレルギー性鼻炎などによって引き起こされるケースが多く、その場合は「蓄膿症」や「副鼻腔炎」と呼ばれるのが一般的です。一方で、むし歯が原因で上顎洞炎が起きることもあり、その場合は「歯性上顎洞炎」と呼ばれます。
上の奥歯の歯根の先は上顎洞に近い位置にあるため、その歯がむし歯になって歯根の先に達するほど悪化すると細菌が上顎洞に入り込んで炎症を起こすことがあります。これが、歯性上顎洞炎です。歯性上顎洞炎になると上顎洞に膿が溜まり、悪化すると頭痛をともなうようになります。
■頭痛を改善するには・・・
頭痛を改善するためには、上顎洞炎の治療を受ける必要があります。風邪などが原因で起きる上顎洞炎(蓄膿症・副鼻腔炎)の場合は耳鼻科で治療を受けますが、むし歯が原因で起きる歯性上顎洞炎の場合は歯科医院での治療が必要です。歯性上顎洞炎の治療では、レントゲンやCTで原因となっている歯を特定したうえで歯根の治療をおこない、歯根の先に溜まっている膿みを排出します。
むし歯 → 脳静脈血栓症 →頭痛
むし歯を放置していると脳静脈血栓症を発症し、それが頭痛の原因となることがあります。
むし歯がひどくなると口腔内の毛細血管に細菌が入り込み、血栓(血の塊)を作って脳静脈に詰まることがあります。これが、脳静脈血栓症です。脳静脈血栓症は非常に稀な疾患ですが、発症すると脳出血を引き起こし、頭痛や吐き気、意識障害やけいれんなど様々な症状が出るようになります。脳静脈血栓症によって起こる頭痛は非常に強い痛みをともなうのが特徴で、最悪の場合は命が脅かされるリスクもあります。
■頭痛を改善するには・・・
頭痛がひどい場合や吐き気がある場合は、神経内科や脳神経外科などを受診することが先決です。むし歯が原因になっている場合はもちろん、歯科医院でのむし歯治療が必要になります。
まとめ
むし歯は軽度のうちに治療しておけば、数回の通院で治るケースがほとんどです。しかし、歯科医院に行かずに放置していると顎関節症や上顎洞炎を発症してしまうケースもあり、そうなると長期間かつ大がかりな治療が必要になります。さらに、免疫力が低下している方や高齢の方などは脳静脈血栓症を招くリスクもあるため、むし歯だからと言って油断することはできません。原因不明の頭痛がある場合はむし歯から他の病気に発展している可能性もあるため、早急に歯科医院を受診しましょう。
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監修者情報
公開日:2021年6月8日
更新日:2022年2月22日
清水智幸(しみずともゆき)
東京国際クリニック/歯科 院長
歯学博士。日本歯科大学卒業後、近代歯周病学の生みの親であるスウェーデン王立イエテボリ大学ヤン・リンデ名誉教授と日本における歯周病学の第一人者 奥羽大歯学部歯周病科 岡本浩教授に師事し、ヨーロッパで確立された世界基準の歯周病治療の実践と予防歯科の普及に努める。歯周病治療・歯周外科の症例数は10,000症例以上。歯周病治療以外にも、インプラントに生じるトラブル(インプラント周囲炎治療)に取り組み、世界シェアNo.1のインプラントメーカー ストローマン社が開催するセミナーの講師を務めるなど、歯科医師の育成にも力を入れている。
・日本歯周病学会 認定医
・日本臨床歯周病学会 認定医
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