2024.01.22
歯石の原因とは?放置するリスクや除去方法を解説
歯石とは?
歯石とは、プラーク(歯垢)が石灰化して石のように硬くなった塊のことで、主に歯と歯茎の境目に付着します。歯石の約8割はリン酸カルシウムで、その他、細菌の死骸やたんぱく質、炭水化物などでできています。
歯と歯茎の境目よりも上(歯冠側)に付着している歯石のことを「歯肉縁上歯石(しにくえんじょうしせき)」と言い、歯と歯茎の境目よりも下(歯周ポケット内部の歯根面)に付着している歯石のことを「歯肉縁下歯石(しにくえんかしせき)」と言います。
■歯肉縁上歯石
歯肉縁上歯石は、プラークが唾液中に含まれるカルシウムやリン酸と反応して形成されます。色は黄白色で歯茎より上の部分に付着するため、目視でも歯石が付いているのが分かります。
■歯肉縁下歯石
歯肉縁下歯石は、歯周ポケット内部の浸出液に含まれるミネラルによってプラークが石灰化して形成されます。色は茶褐色または黒褐色をしていますが、歯周ポケット内部の歯根面に付着しており、通常は歯茎で隠れているため目視で見ることはできません。歯周病が進行すると歯周ポケットが深くなっていき、ポケットの奥深くにまで歯肉縁下歯石が溜まるようになります。
意外と知らない人が多い「歯垢、プラーク、歯石の違い」は、以下の記事で詳しく解説しています。
>> 歯垢・プラーク・歯石の3つの違いと予防・除去法
歯石ができる原因
歯石はプラークが石灰化してできるものです。個人差はありますが、通常、口腔内のプラークは48時間程度で石灰化しはじめて歯石になると言われています。歯石ができるメカニズムを詳しく説明すると、以下のようになります。
・口腔内にプラークが溜まる
・プラークに含まれる細菌が歯の表面に付着する
・細菌は歯に付着したまま死ぬ
・死んだ細菌は唾液に含まれるカルシウムやリン酸と反応して石灰化する(歯石になる)
・歯石の上にまた新たな細菌が付着し、その細菌が死んで石灰化する(歯石になる)
・これを繰り返すことで歯石が大きくなっていく
このメカニズムを見ても分かるように歯石の出発点はプラークであり、口腔内にプラークの取り残しが多い人ほど歯石ができやすくなります。言い換えると、歯石ができる直接的な原因は「不十分なブラッシング」であるとも言えます。
歯石を放置するとどうなる?
歯石そのものが病気を引き起こすことはありませんが、歯石は表面がザラザラしており、その上にプラークが溜まりやすいという性質があります。そのため、歯石を放置していると以下のようなリスクが生じてきます。
■歯周病のリスクが高まる
口腔内に歯石があると、そこにプラークが付着しやすくなります。プラーク中には無数の歯周病菌が含まれているため、結果的に歯周病に感染するリスクが高くなります。すでに歯周病を発症している方も、口腔内に歯石があると歯周病が治らないどころか、ますます進行しやすくなってしまいます。
■むし歯のリスクが高まる
歯石によって歯周病のリスクが高まるのと同様に、むし歯のリスクも高まります。プラーク中には無数のむし歯菌が含まれているため、歯石の表面にプラークが付着すればするほど、むし歯にかかりやすくなってしまいます。
■口臭を引き起こすことがある
口臭の原因は様々ですが、歯石も口臭を引き起こす原因になりうることが分かっています。上述のとおり、歯石の表面はザラザラしているため、そこに細菌や汚れが溜まりやすくなります。そうなると、口臭の元になるガスが発生しやすくなるのです。
■見た目が悪くなる
歯肉縁上歯石は、歯茎より上の歯冠側に付着するため、笑ったときなどに周囲から目立つことがあります。歯石が溜まった口元は見た目が悪く、「不衛生」「不健康」といった印象を与えてしまいます。
特に歯石が付きやすい場所
歯石は、唾液中のカルシウムやリン酸がプラークに取り込まれて石灰化してできるものです。そのため、歯石は唾液の量が多い箇所に溜まりやすい傾向にあります。
下顎の前歯の裏側には「舌下腺」「顎下腺」という唾液腺があるため、歯石が溜まりやすい傾向にあります。同様に、上顎の奥歯の頬側(外側)には「耳下腺」という唾液腺があるため、歯石が付着しがちです。
歯石を落とす方法
歯石はプラークと違い、石のように硬くなっているのでブラッシングで落とすことはできません。そのため、歯科医院で「スケーリング」を受ける必要があります。スケーリングとは「スケーラー」と呼ばれる器具を使って物理的に歯石を除去する処置のことで、手動で歯石を落とす「ハンドスケーラー」と、超音波の力で歯石を落とす「超音波スケーラー」があります。
なお、歯周病にかかっている方は歯周ポケットが深くなっており、ポケットの奥深くにまで歯石が溜まっています。このような場合、肉眼で歯石を確認しにくいうえ、狭い歯周ポケット内部でスケーラーを操作するのは難しいため、歯茎を切開して歯根面を露出させたうえで歯根面に付着した歯石を除去します(フラップ手術)。一般的に、歯周ポケットの深さが4mmを超える場合はフラップ手術が選択肢になってきます。
歯石を落とす方法や注意点については、以下の記事でも詳しく解説しています。
>> 歯石は歯磨きでは落とせない? 歯垢と歯石を除去する方法
>> 歯石除去の方法や注意点・頻度
歯石の予防方法
歯石が付かないように予防するには、プラークを溜めないようにするしかありません。そのためにできることは以下の2つです。
■丁寧なブラッシングでプラークを溜めないようにする
口腔内にプラークがなければ歯石ができることもありません。歯石が付くのを予防するには、できるだけプラークを溜めないようにすることが重要であり、そのためには丁寧なブラッシングが欠かせません。プラークは特に歯と歯茎の境目に溜まりやすいので、そこを意識してしっかりと毛先が当たるように磨きましょう。
また、歯と歯の間や奥歯の裏側は歯ブラシが届きにくいため、歯間ブラシやデンタルフロスを併用して、できるだけプラークを取り残さないようにしましょう。
■定期的に歯科医院でクリーニングしてもらう
ブラッシングが上手な人でも口腔内から100%プラークをなくすのは不可能であり、誰でも多少の磨き残しはあるものです。このような「ブラッシングの限界」をカバーできるのが、歯科医院のクリーニングです。歯科医院で専用の器具を使ったクリーニングを受けることで、プラークの取り残しや歯石をきれいに除去することができます。
まとめ
歯石が一度付着してしまうとブラッシングで落とすことはできないので、歯石になる前のケアが重要になってきます。日々丁寧なブラッシングを心がけるとともに、定期的に歯科医院でクリーニングを受け、歯石が溜まりにくい口腔内環境を維持していきましょう。
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監修者情報
公開日:2021年10月11日
更新日:2024年1月22日
清水智幸(しみずともゆき)
東京国際クリニック/歯科 院長
歯学博士。日本歯科大学卒業後、近代歯周病学の生みの親であるスウェーデン王立イエテボリ大学ヤン・リンデ名誉教授と日本における歯周病学の第一人者 奥羽大歯学部歯周病科 岡本浩教授に師事し、ヨーロッパで確立された世界基準の歯周病治療の実践と予防歯科の普及に努める。歯周病治療・歯周外科の症例数は10,000症例以上。歯周病治療以外にも、インプラントに生じるトラブル(インプラント周囲炎治療)に取り組み、世界シェアNo.1のインプラントメーカー ストローマン社が開催するセミナーの講師を務めるなど、歯科医師の育成にも力を入れている。
・日本歯周病学会 認定医
・日本臨床歯周病学会 認定医
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