2024.01.22
普通の歯ブラシ(手磨き)ではなく、電動歯ブラシにすべき?
電気の動力によってヘッドが動く電動歯ブラシが普及し始めたのは1990年代のこと。そこから技術の進化によって振動数が増え、メーカーや商品によって振動にもバリエーションが出るようになりました。最近では、電動歯ブラシの中でも、より高速の振動で汚れを落とす音波式歯ブラシが注目されています。代表的な商品として、ソニッケアー(フィリップス社)やオーラルB(ブラウン社)といったブランドが広く認知されていると思います。
ですが、その一方で歯科医師や歯科衛生士によっては、電動歯ブラシ(音波式歯ブラシ)の使用ではなく「手磨き」を推奨するケースも少なくありません。今回のコラムでは、そんな普通の歯ブラシと電動歯ブラシの賛否両論についてフォーカスします。
音波式歯ブラシについて知りましょう
「音波式」と聞くとそれだけでなんとなく前衛的な感じがしますが、「電気の力で自動的に歯ブラシが振動する」という点では従来の電動歯ブラシと同じです。異なるのは、振動の速さ(周波数)。音波式歯ブラシでは、電磁石の引き合う力と反発する力を使ったリニアモーターによって微細な高速音波振動を発生させるため、1分間に2万回以上の往復が可能です。これが、「これまでの電動歯ブラシでは実現できなかった高い歯垢除去力を発揮!」といった謳い文句の根拠になっていると思われます。
音波式歯ブラシではダメなの?
いえ、そういう訳ではありません。私たち東京国際クリニック/歯科でもおすすめのデンタルケアグッズの一つとして音波式歯ブラシを取り扱っておりますが、音波式歯ブラシを使うことにはもちろんメリットもあります。
一つ目は、技術力不足をカバーしてくれるところです。手磨きだとブラッシングの精度に差が出てしまうのが最大の弱点ですが、音波式歯ブラシを使えばあまり上手に磨けない人(そのせいで歯周病になりやすい人)でも効率的に歯垢を落とすことができます。また、音波によって発生する水流により、毛先から2~3mm先まで力が届くのも普通の歯ブラシにはない特長です。あくまで補助的な役割ですが、毛先が届きにくい浅めの歯周ポケット内部をきれいにするうえでは一定の効果が期待できます。
最新の音波式歯ブラシでも、1分や2分できれいにはできません
冒頭に戻りますが、手磨きを推奨する先生や歯科衛生士の方が多くいらっしゃるのにも理由があります。それは、電動歯ブラシに頼ることでブラッシングが雑になってしまうこと、そして歯や歯茎への負荷の大きさなどを考慮しているからだと思います。(振動数が多ければ多いほど傷めるリスクが高くなりますが、手磨きでも同じです。いずれも、正しいブラッシングをしていただければ問題ありません)
いくら最新の音波式歯ブラシを使っても、たかだか1分や2分で28本の歯に付着した歯垢をきれいに除去できるわけではありません。結局のところ、カギになるのは「どれだけ歯垢を確実に取り除けたか」。つまり、丁寧なブラッシングで正しく歯垢を除去できている方なら、普通の歯ブラシでもまったく問題はないと私たちは考えます。
正しく歯垢を除去するための一番の近道は、歯科医院でブラッシング指導を受けること。丁寧なブラッシングが大前提となりますが、より効率的にブラッシングをするためにはプラスオンで音波式歯ブラシを使用するようにするといいかもしれませんね。ご参考までに、当院はフィリップス社の電動歯ブラシを使用しています。
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監修者情報
公開日:2015年12月25日
更新日:2024年1月22日
清水智幸(しみずともゆき)
東京国際クリニック/歯科 院長
歯学博士。日本歯科大学卒業後、近代歯周病学の生みの親であるスウェーデン王立イエテボリ大学ヤン・リンデ名誉教授と日本における歯周病学の第一人者 奥羽大歯学部歯周病科 岡本浩教授に師事し、ヨーロッパで確立された世界基準の歯周病治療の実践と予防歯科の普及に努める。歯周病治療・歯周外科の症例数は10,000症例以上。歯周病治療以外にも、インプラントに生じるトラブル(インプラント周囲炎治療)に取り組み、世界シェアNo.1のインプラントメーカー ストローマン社が開催するセミナーの講師を務めるなど、歯科医師の育成にも力を入れている。
・日本歯周病学会 認定医
・日本臨床歯周病学会 認定医
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